絹の縛
※こちらは、催眠をテーマにしたショートストーリーのフィクションです。 部屋に、甘いバニラとサンダルウッドの香りが漂う。 赤い蝋燭の炎が、壁に妖しい影を投げかける。 泪は黒い絹のドレスをまとい、ソファの上で身を縮こませていた。 瞳には、怯えと秘めた欲望で潤んでいる。 目の前にいる実愛が、黒革の手袋をはめた手で銀の懐中時計を揺らす。 チク、タク。音が、泪の心臓と共鳴する。 「泪、私の声だけを聞きなさい。 ほかの全てを忘れるのよ」 実愛の声は、まるで熱い蜜のように耳に流れ込む。 低く、滑らかで、拒めない。 時計の揺れに合わせ、泪の呼吸が深く、ゆっくりと変わっていく。 泪の指先が、ドレス